外から観たコミティア 特別版 北海道コミティア代表・渡部直

北海道コミティア1会場風景
2014年11月、北海道の札幌で、なんと20年ぶりという新しい地方版コミティアが始まりました。参加者の期待も大きかったのか、募集の1・5倍もの参加サークルが集まり、会場は大にぎわい。東京コミティアのスタッフも10数人が参加して、大いに北海道を満喫しました。今回は北海道コミティア代表の渡部直さんに、東京代表の中村公彦が、第1回を終えた感想と今後の展望を聞きました。

第1回は大成功

中村 あらためて、北海道コミティア第1回大成功お疲れ様でした。

渡部 ありがとうございます。

中村 私も当日参加しましたが、実際に開催した立場からの感想を聞かせてください。

渡部 第1回だから直接参加が150サークルくらい集まってくれるといいな、と思っていたところに、直接参加228サークル・委託参加77サークルと大きく予想を上回る申込がありました。予定していた会場では収まらなくなり、併催のオールジャンルイベント「エリシアン」は同会場の別ホールに移動したんです。当日は朝から一般参加者の方が100人以上並んでいました。しかも閉会までずっと途切れなく人が来続けて、『ティアズマガジン北海道1』もまさかの完売でした。搬入分が足りなくなって、ストック分を急遽取りに戻ったくらい。全部搬入しちゃえば良かったんですけど、失敗しましたね(笑)。総来場者は約1000(エリシアンを合わせると1300)人くらいだったと思います。スタッフ体制もいきなり拡大したこの規模には対応し切れなくて、地元の他のイベントのスタッフが協力してくれたり、当日はかなりバタバタでした。

中村 私はJRの事故があって遅れたため最後の乾杯しか参加できませんでしたが、サークル・スタッフ参加者を集めた前夜祭もたいへん盛り上がったようですね。

渡部 道外から遠征してきたサークルさんも多かったので、北海道を楽しんでもらいたいなと思って初めて企画しました。要は北海道らしい料理を出す居酒屋での飲み会だったんですが、地元の人も結構いたけれど、まさか50人近い規模になるとは思っていませんでした。

中村 東京コミティアの出張委託コーナーでも予想以上に本が売れました。コミティアで委託するのは、あまり同人書店で扱われないような本が多いので、新鮮だったのでしょうか。多目に搬入したんだけれど、売行きが良くて完売続出でした。本当に北海道に来た甲斐があったなぁって思いましたね。

 

北海道の同人誌状況は?

渡部 今回の申込みの約1/4が遠征サークルで、残りの3/4が北海道在住のサークルだったんです。多くの北海道のサークルは普段は地元のイベントには出ないで、東京などの大規模なイベントに遠征するだけだったり、いつもは二次創作をやっていたりする方の参加が多かったようです。そういう意味では「待たれていたんだな」という感触がありましたね。サークルアンケートでも好意的な感想をたくさんいただけたので、これからも続けて参加してもらえるのではと期待しています。

中村 今回これだけのサークルが集まってくれて、今後も継続していけるだろうとは思うんですけど、サークルさんと一緒に北海道コミティアで何をやっていきたいのか、どういうことを目指しているのか、イメージはありますか?

渡部 コミティアはこれまでの北海道にはなかった形のイベントだと思うんですよね。それを定期的に開催して、安心して作品を発表できる場を用意することで、道内で活動しているサークルさんたちに「変化」を与える存在になりたいんです。これまでの積み重ねを守ってゆくことも大事だけれど、変化球を投じるという気持ちも必要なのではと思っています。
北海道のイベントは、最盛期の90年代後半には1500〜2000サークルくらい集まる規模のものを月イチで開催していた時代もあったのですが、現在は開催頻度も減ったし、一度に多くて500サークル参加といった状態です。
僕が現在代表を務めているエリシアンというオールジャンルイベントは、通常は160サークルぐらいの規模です。エリシアンは初代の代表が約10年前に地方の同人誌即売会が、本では無くグッズ主流になってしまっている状態をなんとかしたいと思って始めたものなんです。コスプレも禁止で、最初始めた時は本が最低でも1冊、現在はスペースのディスプレイの半分以上を本にしないとサークル参加できないという規定になっています。当初は直接参加が12サークルしか集まらず、「失敗イベント」と呼ばれるような惨状でしたが、定期的に開催する内に申込が徐々に増えていって、開始してから4年後にはサークル満了しました。その頃から「一石を投じる」という目的意識はずっと受け継がれているんです。

 

北海道でコミティアを始めた理由

中村 創作オンリーの同人誌即売会をやろうと思った時に、エリシアンの一次創作オンリー版を開催するやり方もありえたと思うんですけど、あえて北海道でコミティアをやろうと思ったきっかけは何だったんでしょう?

渡部 そもそもは僕個人がコミティアの同人誌をもっと読みたかったんです(笑)。そんな動機から東京コミティアの見本誌読書会・出張版を何度かやらせてもらいました。エリシアンの参加サークルも、一次創作が増えてきて、ここ1〜2年で2割以上が一次創作ジャンルという状態になってきています。そういう機運が盛り上がっていたところもありましたし、本にこだわる姿勢との相性も良かった。

中村 北海道で即売会をやっている立場から、東京のコミティアってどう見えるのでしょう。「コミティア」という名称を使うことで逆にやりづらさは感じませんでしたか?

渡部 お手本にすべき存在ですね。僕の目からはそう見えます。
見本誌を集めることにも、ティアズマガジンの存在にも、一つ一つに必ず理由があって、相互に組み合わされて効果を高めていけるように、それに沿ったシステムが考え抜かれている。参加者が読んで本を手に入れたくなるきっかけを作るという、コミティアのシステム的なところに非常に魅かれています。
「コミティア」という名称がついていれば、参加者にも「コミティアのシステムを受け継いだイベントなんだな」とすぐに伝わりますよね。もしも別の名称の創作イベントを開催したとしたら、打ち出していきたいシステムを根付かせるところから始めなくてはいけないし、そこが非常に難しいんです。
東京コミティアでやっていることを全て同じようにやれるわけではないですけど、地方でやるなら地方なりの特性を活かして、カスタマイズしていきたいと思います。

中村 初めての「ティアズマガジン北海道」を作るのは大変だったでしょう。同人誌紹介のページを作るのは、普通のイベントパンフではあまり無い経験ですからね。今回は紹介されたサークルのほとんどが当日サークル参加されていましたね。本の感想はどうやって集めたんですか?

渡部 第1回からティアズマガジンには同人誌紹介を載せたくて、2014年6月に開催したプレイベントである「北海道コミティア0.5」の時に集めた見本誌を、ツイッターなどの呼びかけで集まってくれた方々と読んで、スタッフ含めてみんなで感想を書きました。一番大変だったのはカット選びですね。気に入ったシーンに付箋を付けたりして、試行錯誤しながら作りました。

中村 第1回が終わって、実際にこれから何がどう「変化」してゆくかはやってみないと分からないでしょうけれど、きちんとサークルさんの方を見て開催していけば大丈夫だと思いますよ。歴史を積み重ねて、ぜひ続けていって欲しいですね。今後ともどうぞよろしくお願いします。

渡部 こちらこそよろしくお願いします。

北海道コミティアよりのメッセージ
北海道コミティアは、「東京まで頑張って遠征しなくても、珠玉の同人誌に出逢える場、想いを込めた作品を発表するに足りえる場」として機能するイベントを目指します。まずは継続的・定期的に開催することで、北海道の一次創作サークルの作品発表の場を安定して確保することに努めます。同人誌を媒介として、描き手・読み手相互のモチベーションを高めるコミティアのシステムをしっかりと継承しながら、「一石を投じる」姿勢を忘れずに、少しずつでも「北海道」ならではの特色を発揮できればと考えています。
第2回は2015年6月28日(日)に開催いたします。この時期の札幌は過ごしやすい気候である上に、お手頃な価格でお越しいただけるシーズンでもあります。おいしい食べ物や見どころもたくさんあります。北海道外の方には、たっぷりと観光と楽しんだ後に、北海道コミティアへご参加いただけると幸いです。 北海道コミティア
ティアズマガジン北海道1
開会を待つ一般参加者の列
東京コミティア見本誌コーナー
東京コミティア出張委託コーナー
 
併設企画の「宇宙戦艦ヤマト2199」
むらかわみちお漫画原画展