COMITIA113 ごあいさつ

作品を「読み継ぎ、語り継ぐ」ことについて

まず報告です。7月19日に、新しい地方コミティア「みちのくコミティア~創作旅行~」の第1回が、福島県郡山で開催されました。これは地元で16年間行われていた創作同人誌即売会「トラベラーズ」がコミティアの名前で再出発したもの。おかげ様で直接参加175サークル/委託参加69サークルとこれまでの開催の数倍の規模のサークルが集まり、一般参加者も多く来場してくれて、場内は大にぎわい。うれしいスタートとなりました。とくに東京を中心に県外からの参加者が多かったことは、それだけ注目を集めたということでしょう。
地元のスタッフが用意した企画もユニークで、地方コミティアならではローカル色がいっぱい。ティアズマガジンを買うとお米をもらえたり、オリジナル限定でコスプレが解禁されたり、飲食販売コーナーでも地元の食材がいろいろ食べられたり。イベント終盤にはビンゴ大会で盛り上がり、最後は参加者全員の一本締めで閉会しました。こうしたイベントの一体感は大規模なイベントではなかなか味わえないもの。来てくれた参加者を全力で楽しませよう、というスタッフの意気込みが伝わりました。
東北でのコミティア開催に際しては、どうしても4年前の東日本大震災のことを意識してしまうのですが、みちのくティアズマガジンの巻頭あいさつ(PDF)で、主催のADV企画代表の高雅勇有行さんはこう書いています。
「遠慮したり心苦しく思っていただくことは少しもありません。思っていただいたところで誰もしあわせになれません。ひとりの被災地の者として、これが率直な今の気持ちです。どうぞ思いっきりイベントを楽しんで笑いあって下さい。」
この言葉を読んで、東京の人間として(当事者でない立場で)何ができるのかを自問しながらも、躊躇して何もしないよりは、自分が出来ることがあるならばやるべきだ、と踏ん切ることが出来ました。
会場でたくさんの人の笑顔を見ていると、みんながマンガや創作を楽しんでいるのが伝わります。そういう人たちと出会い、思いを共有し、確認しあえることが同人イベントの存在意義だと思います。そしてそんな1日が当たり前の日常になるように、「みちのくコミティア」はこれからも続いてゆくでしょう。次回開催は来年の同時期の予定。どうぞ楽しみにお待ちください。

さて、こうして続く各地の地方コミティア会場や都内書店で、私は責任編集者として「コミティア30周年記念作品集『コミティア30thクロニクル』完結ありがとう祭」連続トークショーを、掲載作家の方々をゲストに迎えて行っています。
これまで終了したのは、5/17関西コミティア(水谷フーカさん)、5/22書泉ブックマート(高野雀さん・ばるぼらさん・野中モモさん)、6/7新潟コミティア(BELNEさん)、7/19みちのくコミティア(小坂俊史さん・青木俊直さん)。
そしてこれからは、9/27名古屋コミティア(おざわゆきさん)、11/23北海道コミティア(木野陽さん・今純子さん)が続きます。さらに新しく来年1/31の東京コミティア会場で内藤泰弘さん・宮尾佳和さんの登壇も決定しました。
この一連のトークの内容は今回のティアズマガジンから誌上再録も行います。あらためて掲載作家の方たちと『クロニクル』について語っていると、本当に話が尽きることがありません。何よりうれしいのは、作家の皆さんがとても楽しんでこの本を読んでくれていること。みんな自分の好きな作品について目を輝かせて話してくれる、まさに「語れる本」なのです。
なお、クロニクル特設サイトでは、掲載作品の応援Push&Reviewを掲載しています。実は掲載作家の方々もたくさん投稿してくれた超豪華版です。熱いコメントとイラストの数々をぜひじっくりご覧ください。
『クロニクル』を作ることになった時、まず「コミティア30年間の記録」として考えました。けれど出来上がった本をたくさんの今の読者が読んでくれて、20数年前の自分が興奮して読んだ作品に、彼らが同じように新鮮に反応してくれることに深く驚いています。それが優れた作品の持つ普遍性なのでしょう。コミティアの役割の一つはこうして「読み継ぎ、語り継ぐ」こと。それがまだ見ぬ未来の読者へもきっと届くように、その魅力を大切に伝えてゆきたいと思います。

最後になりましたが本日は3742のサークル・個人の方が参加しています。今日という日にあなたにとって「語り合いたい」作品と出会えることを祈っています。そこからきっと新しい何かが、あなたの人生に生まれてくると思うのです。

2015年8月30日 コミティア実行委員会代表 中村公彦

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