片渕須直監督からの手紙

▼片渕監督のトークショー風景(スクリーンは作品のために集めた資料の数々)
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引き続き、代表です。
5/5のCOMITIA112会場にて行われた、アニメ映画「この世界の片隅に」(原作:こうの史代)クラウドファンディング応援企画のレイアウト原図展と片渕須直監督のトークショーはおかげ様で大好評、大盛況でした。
トークショーの部屋はあっという間に満員となり、とても観れないので諦めた人も多かった様子です。また、ジュンク堂書店の出張販売のコーナーでも、原作本が多数売れました。
その後、クラウドファンディングの支援額は順調に伸びて、目標を大きく超えて3000万円に届く勢いです。本作品に興味のある方はぜひご参加ください。サイトはこちら→Makuake
そして、片渕須直監督からも後日、御礼の手紙が届きました。
これはコミティア参加者へのメッセージでもあると思ったので、監督の了解を得て、ここで公開させていただきます。
片渕須直監督からの手紙
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 始めは自分たちで同人誌的に作った「この世界の片隅に」のTシャツや手ぬぐい、それにポスターなどを販売させてもらおうと思ってふつうに応募したつもりだったのですが、コミティア代表の中村さんから「いっそイベントをやりませんか?」といっていただけました。これまでに築かれてきたこうの史代さんとコミティアとの関係の賜物だと思っています。自分たちはそこに便乗してしまっただけでしたのに、恵まれていたと思います。
 させていただけるのなら、これまでは広島や呉では催してはきたのだけれど、東京ではまだやったことのないレイアウトの展示をここでやってみたいと思いました。こうのさんの「この世界の片隅に」をアニメーション映画化するために、作品の中で描かれる世界に関してかなりいろいろな調べものをしてきてしまったのですが、そうしたものを反映させた上で各カットごとに画面を作り上げる下絵として描いたのがレイアウトです。これまで広島では広島市内を描いたレイアウト、呉では呉市内を描いたレイアウトばかりという形で展示してきたのですが、東京ではそれらを全部ひっくるめた形で展示してみようと思ってしまい、合わせると90点近い数になってしまいました。その中からどれかをチョイスするという形ではなく、ありったけすべてを展示できるだけのスペースを与えていただいたのですから、これは冥利に尽きるというものです。ほんとうにありがたかったです。
 とはいいつつ、こんな色もついていない、鉛筆で描いた下書きみたいなものをどれほどの人が観にきてくれるのだろう、という思いもありました。お客さんが来て下さったのは、併せてトークの時間をいただけたことが大きかったと思っています。これまでもロフトプラスワンなどで「この世界の片隅に」でどんな感じで調べものをやったかという(それ自体変なテーマなのですが)トークをしてきたのですが、多いときでも100人くらいのお客さんの数でした。今回のトークでは130席くらい椅子を用意していただいて、それが気がつけば満席になり、さらに立ち見の方も大勢入っておられて、うちのスタッフが数えたところでは全体で200名もの方に聞いていただくことが出来ました。実は中には、ふだん漫画やアニメにあまり興味があるようにも思えない片渕の高校の同級生なども、これまでには全然顔を出してもらえなかったのに今回は来てくれていて、会場としての普遍性、一般性を強く感じました。
 立ち見のお客さんが多いので、あらかじめ与えていただいた1時間半を越えられないようには思いました。実は今までのイベントは3時間を持ち時間として行ったことも多かったので、こちらの持ちネタとしてはやろうと思えばまだまだ続けることも可能かもしれなかったのですが、でも、この1時間半という区切りも結果的に、お客さんの中に「まだあともう少し味わいたい」という余韻を残せたのかも知れず、絶妙だったと思っています。
 まだ出来てもいない映画にこれだけの場所と時間を与えていただいて、さらにそこにこれだけの数のお客さんが来てくださるというのは、ふつうは考えにくいことです。そこにプロの描き手の方々が多数混ざっておられたというのも、得がたいことでした。このコミティアの直後、「この世界の片隅に」制作支援のクラウドファンディングの支援者数が大きく跳ね上がっていたみたいです。影響力を発揮できる恵まれた条件で展示とトークをさせていただくことができました。心より感謝いたします。
 与えていただいたものを無駄にしないように、映画作りをがんばる所存です。
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片渕監督のスタジオに展示企画の打合せに伺った際、短いデモムービーを観せていただいて、
まるで往時の風景の中に自分が居るようで、思わず目頭が熱くなりました。
私はこの映画が傑作となることを確信しています。
あらためて、来年の完成を楽しみに…。

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