会長・中村です。
2月13日に亡くなられた松本零士先生の作品の思い出を少し書かせてください。
氏の作品を初めて読んだのは小学生の頃。『週刊少年マガジン』で連載された「男おいどん」でした。
大四畳半、ラーメンライス、サルマタケ、下宿館のバーサン、トリさん、といったユニークなモチーフとキャラクターは強烈で、幼い自分は主人公・大山昇太の抱える孤独感に、いつか成長する己の姿をダブらせていたように思います。
そして、その後の氏の代表作である「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」といったロマン溢れるSF大作は、大いに胸を躍らせてくれました。
けれど、もう一つここで紹介したいのは「戦場まんがシリーズ」(『週刊少年サンデー』ほか)のことです。
読切シリーズの形で発表された本作は、戦場の過酷な状況下で必死に生き抜こうとする兵士たちの群像を描きます。同時にそこに登場する戦争兵器の数々もまた悲しい登場人物のように感じました。
また、毎回30P前後の短い枚数の一話完結で、それぞれシチュエーションが違う物語を描き、凝縮されたテーマを的確に伝える作劇の巧みさは、その演出手法の点でも多くのマンガ描きの皆さんに触れて欲しい傑作です。
とくに画像を引用した「音速雷撃隊」(『オーロラの牙』収録)のエピソードは、10代半ばの自分に戦争の恐ろしさと愚かさの両方を心に深く刻みました。
(作中の表現は現在の版では「大バカ」と変更されていますが、自分が読んだ当時の心象を伝えるために、旧版の画像を引用させていただきました。)
今まさに戦時下にあるこの世界だからこそ、多くの人に読んで欲しい作品です。
あらためて沢山の作品を遺された松本零士先生のご冥福を心から祈ります。