会長・中村です。
神奈川近代文学館で開催されている「帰って来た橋本治展」を観に行ってきました。
私が橋本治さんの文章を初めて読んだのは70年代の終わり、まだ10代半ばのことでした。
まんが情報誌『ぱふ』に掲載された橋本さんの少女マンガ評論に触れて、初めて目が開かれたように感じました。
黄金期と呼ばれたこの時期に少女マンガと出会い、数々の名作傑作をリアルタイムで読みながら、自分の中に残る不定形のモヤモヤした感覚を、橋本さんは明晰な文章で言語化してくれたのです。
マンガをこんな風に語れることが衝撃的でしたし、そこには更なるマンガの可能性が秘められていると感じました。
そのまま私は高校生の頃から『ぱふ』編集部にお手伝い人として出入りするようになり、編集スタッフになり、その後の紆余曲折を経て、今は此処にいます。
とは言え、氏の著作はマンガ評論の代表作『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』(1981年刊)しか読んだことが無く、とても橋本治のファンとは言えないのですが、橋本さんが2019年に亡くなってから初めての大規模な回顧展が行われるとのことで行ってきました。
横浜の「港の見える丘公園」の中にある神奈川近代文学館は、膨大な資料をご遺族・関係者より寄贈を受け、「橋本治文庫」として保存しているのだそう。この展示もその所蔵資料を公開するものです。
実際に展示された作品群を目の当たりにすると、その生涯での膨大な仕事に圧倒されるしかありませんでした。
本業の小説に留まらず、多岐に渡る分野の評論や、古典を独自の視点で新訳・翻案して話題を呼んだ作品たち、そしてイラストレーターとしての仕事やセーター編み作家の一面など、とても一人の人間の為せる仕事の幅や量とは思えません。
「知の巨人」と呼ばれた橋本さんのほんの一端を垣間見せてもらったように感じました。
今はただ、「凄かった」という感想しかないのです。
会期が明日の6/2までで、私も滑り込みで行ったのですが、もしお時間に余裕のある方がおられたら足を運んでいただけたらと思います。