こんにちは、もしくは、はじめまして。コミティア84拡大Specialへようこそ。おかげさまで一年振りのビッグサイト2ホール開催リターンズとなりました。去年よりちょっとだけ増えて2637サークル。どうやらGWの2ホール開催は定着したと言えそうです。
今回コミティアに初参加の方も多いでしょう。他のオールジャンルの同人誌即売会とはちょっと雰囲気が違うかもしれません。何より平均年齢が高いし、全体に落ち着いた感じで閉会までゆるゆると続きます。
「いや、それ以前に同人誌即売会が初めてだよ」という方もたくさんおられると思います。簡単に説明するなら、主にアマチュアのマンガ描きが自主出版したマンガ本を展示即売する催しです。机の上のフリーマーケットに近いかもしれません。だから本をパラパラ見たりする時の描き手とのちょっとしたやり取りもお楽しみの一つ。わざわざ遠く有明まで足を運んだ分、本屋さんでは出会えない、描いた作家とのコミュニケーションを楽しんでみてください。
さて、コミティアは「同人誌即売会」ですが、この1万人以上のマンガ好きが集まるライブな空間で、もっとマンガの可能性を試したいと考えて、いろいろな会場内イベントを盛り込んでいます。
今回は「西原理恵子大原画展」を開催。なんと20年前の原稿から最新作まで、作家としての軌跡を辿れる内容となっています。この他、しりあがり寿さんとの画力対決の映像や、西原さんの推薦図書の実物を読めるようにしたり、企画盛り沢山です。担当編集・八巻和弘氏との対談は入場パンフレットの『ティアズマガジン』でお楽しみ下さい。
実はこの原画展の発案は4年前に遡ります。とある高円寺のスナックで、西原さん御一行(作品でおなじみ西原さん、愛さん、加ト吉さん、山田参助くん)が飲んでいたところに、代表の私がたまたま遭遇。その時、西原さんにかねてよりやりたかった原画展の開催許可をお願いしたのです。西原さんは「いいっすよ〜」と気軽に応じてくれました。「実はもうキャッチフレーズは決めてあるんです。『マンガはこれでいいんだ』って」と私。すると西原さんは「言ったな、おまえ。」とニヤリと笑いました。
その悲願が今日やっと実現しました。今更ながら、流行の先端を追いがちな同人誌即売会で西原理恵子原画展というのはイレギュラーな企画なのかもしれません。けれど私は敢えてこう言いたいのです。「マンガはこれでいいんだ」と。
最近、デジタル化の影響も含めて、マンガが「つるん」とした印象になっている気がします。表現やテクニックが、複雑・高度化し、普通の人が手を出しずらくなっているんじゃないかとも思います。しかしマンガとは本来、紙とペンさえあれば誰でも描けるのがその素晴らしさだった筈なのです。
西原理恵子の絵は、よく言えば「素朴」。悪く言えば、本人も売り物にするように「汚い」。しかしそこにはざらざらとした確かな手触りがあります。その引っ掛かる手触りに、私たち読者はついページを捲る手を止めるのです。その一本の線の持つ力強さ、大胆な色使い、それを生かす構図の妙は、画稿として学ぶ価値が充分にあるでしょう。
そして、その作風の特徴でもある体当たりの精神。物怖じせずに自分をさらけ出し、取材対象にぶつかっていく姿勢には、時として震えるような迫力を覚えます。誰にでも描ける表現で、誰にもやれないことをする。まさにワン・アンド・オンリーな表現者がここにいます。この凄味を多くの描き手にぜひ体感して欲しいと思うのです。
…余談ですが、先ほど名前の出た山田参助くんは、実はかつてのコミティア常連参加者。今回は久々に参加してくれました。スペースNo.き05aでリアル参助氏をぜひ訪ねてみて下さい。
さて、この他の企画は、「出張マンガ&ノベルス編集部」が今回は2本立て。いつもの倍のなんと22ブース/31編集部という豪華ラインナップが登場。それでも、あふれてお断りした会社があるぐらいなので、外側からもエライ人気っぷりです。商業誌に興味のある人はぜひ持込してみてください。
お祭り企画では、白衣にメガネの理系ハカセのおしゃべりを楽しむイベントカフェ「カフェ・サイファイティーク」開店。昨年のSF大会ワールドコンで人気を博したマッドサイエンティストカフェがコミティアに登場します。
増えてきた「サークル合同企画」も、百合部、歴史サークル合同企画、学園執行部、とり部が揃いました。百合部はついに100サークル超えで、一大ジャンルの様相を示してきましたね。それぞれ、原画展示をしたり、合同本を作ったり、プレゼントを用意したり、と楽しそう。好きな人はぜひ! そして、もし興味がなくても意外に面白い発見があるかもしれませんよ。
あと、内緒ですが「きみぴこグッズ」なるものも出るようです…。
最後になりましたが、本日はコミティア過去最大の2637サークル/個人の描き手が参加しています。いろいろ企画満載でお送りする今回のコミティアですが、イベントを構成するのは、そこにいるあなたも含めた全参加者です。一期一会の、今日の出会いが記憶に残るものになりますように心より願っています。
2008年5月5日 コミティア実行委員会代表 中村公彦