「いまのコミティアの立ち位置はどこにあるのだろう?」
ここ最近の参加申込サークルの急増に、ふと自問したくなります。東京ビッグサイトでほぼ毎回、抽選による落選が多数出るとは、数年前には考えてもみませんでした。いつの間にか、コアなマンガファンの間で「コミティア」という単語が、わりと普通に説明抜きで通じるようになりました。
四半世紀も続き、毎回コンスタントに1万~1万5千人の参加者が集まる、老舗?同人誌即売会という信頼感も少しはあるのかもしれません。
初めて自主出版の本を作り、最初に参加するイベントがコミティア、というケースも増えました。彼らは果たして、何を求めてコミティアを選んだのでしょうか。
「読者?」「仲間?」「出会い?」「刺激?」「コミュニティ?」「売上げ?」「安定した運営?」………
諸々の期待にコミティアが応えられているか。いや、もっとやれることがあるのではないか。日々の作業に忙殺されつつも、試行錯誤の毎日が続きます。
今更ながら「オリジナルオンリー」というコミティアのスタンスも、他のオールジャンルのイベントと比べると新鮮に感じられるのかもしれません。オリジナルは「一人一ジャンル」のようなもの。とくにコミティアはバラエティに富んだ、個性の強い作家が揃っているので、そこから刺激をされることも多いでしょう。
そう、参加する読者の質が高い。これはコミティアが密かに誇っている部分です。何しろ、アマチュアベースのオリジナル作品だけの展示即売会に、これだけ多くの「面白いマンガを求める」読者がいつも足を運んでくれるのですから、冷静に考えると驚くべきことです。
そうした貪欲な読者たちがコミティアを「発見」してくれたのは、勿論そこに面白いマンガがあるからですし、質の高い作品、意欲のある描き手が集まっている証左でも有るでしょう。
もう一つの特色は、参加する描き手自身がまた一人の読者であり、周りのサークルの本をよく読み、本を買っていること。いわゆる「ミュージシャンズ・ミュージシャン」、つまり「作家受け」する描き手が集まるのも、コミティアの他に類のない「色」と言えるでしょう。
そんなコミティアがいま目指すのは、これまでの商業誌の価値観とは違う、まず作品ありき、表現欲求ありきの、オルタナティブ(もう一つの選択肢)なメディアをきちんと成立させること。そこにある作品は、ナチュラルだったり、過激だったり、不思議だったり、拙かったりする、混沌としたものかもしれません。けれどそれが、日本のマンガの「生物多様性」を守り、豊かな才能をはぐくむ営みとなる、と考えているのです。
そして、そのためにもコミティアという場を、もっとたくさんの人に「体験」してもらいたい。こんな風に自由に作品を発表できる場所があること。そして自由に描かれた作品が素晴らしく面白いこと。その作品を求めて、たくさんの読者が足を運び、「お気に入りの一冊」を求めて会場を探し歩くこと。それらは、実際にその目で見、現場で感じないと伝わらないものでしょう。それもまたライブの、そしてリアルな、生きた作品の魅力だと思うのです。
さて、今年から11月のコミティアも2ホール拡大開催に決定しました(長い「枕」?で済みません)。出来るだけ多くのサークルに、落選の心配のない状態で参加してもらいたいと思っています。
このティアズマガジンも、サークルを1Pで紹介する「Front View」のページを4Pから6Pに増やしました。考えてみれば今のフォーマットは参加サークル数が1500前後だった時代のもの。毎回2千を越えて、参加サークルの傾向やバラエティが広がっているのに合わせ、誌面の幅も広げてゆかねばなりません。また、今回から始まった「東京・好奇心・散歩」(P56)のように、参加者の創作欲を刺激するような新しい読み物も増やしたいと考えていますので、どうぞご期待ください。
最後になりましたが、本日は直接2180・委託76のサークル・個人の描き手が参加しています。今回も100を超えるサークルが落選の憂き身にあっていて、本当に申し訳なく思います。5月・11月の拡大開催時は落選はない筈なので、ぜひまたご参加ください。また、バレンタインデー開催ということで、会場で「愛の告白」をテーマにしたイラスト&マンガの募集&展示企画があります。詳細はP243をご覧ください。
もし、今日のコミティアで、あなたがお気に入りの一冊を見つけたら。ぜひ、その本の魅力をお友達に教えたり、ティアズマガジンに投稿して、広めてください。そうやって、そこにある一冊一冊の面白さが口伝えで広がることが、コミティアという媒体を何より正しく外に向けて伝えてくれるのだと思います。イベントの魅力とは、そこに発表される作品の魅力に他ならないのですから。
2010年02月14日 コミティア実行委員会代表 中村公彦