この9月下旬からの1ヶ月、名古屋コミティア(9/25)、新潟コミティア(10/2)、間に協力イベントのJガーデン(10/9)を挟んで、関西コミティア(10/16)と、地方コミティア巡りに行ってきました。これだけ連続して開催されるのはなかなか記憶にありません。
思い起こせば、最初の地方版コミティアである、新潟コミティアが始まったのが'91年。ちょうど20年経ったことになります。
東京のコミティアを始めて5年が過ぎ、やっと運営も落ち着いた頃のこと。発端は、新潟の地元総合即売会ガタケット代表の坂田文彦氏からの一本の電話でした。
「新潟でもオリジナルオンリーの即売会を始めたい。ついてはコミティアという名称を使わせてもらえないか?」
との打診に、同じ名前で協力体制が取れるのはこちらも歓迎だったので、喜んで承諾しました。第1回には、東京からも大勢のスタッフと仲の良いサークルが「新潟ツアー」を組んで押しかけ、イベントの打上げが大騒ぎだったのを懐かしく思い出します。
その流れから、'93年には名古屋と大阪でも、それぞれ地方版のコミティアがスタートし、大阪-名古屋-東京-新潟の現在の全国コミティアネットワークが生まれました。
ご存知のない方も多いかもしれませんが、地方コミティアはそれぞれ独立したイベントであり、地元のスタッフたちがいて、ティアズマガジンも彼らが独自に作ります。全体として「コミティア」という名前を共有する、ゆるやかなネットワークなのです。東京が出発点ではありますが、どちらが主従ということもなく、個々の自主性を尊重するスタンスが長く続いている理由かなあと思います。
話を戻して、地方コミティアに参加して、現場で私がすることは、東京から持っていった委託本の販売です。東京のコミティアに参加するサークルから預かった本を、「出張委託」として100種類以上販売しています。マンパワー不足でごく一部のサークルの限られた冊数しか扱えないのですが、同人書店などで手に入りづらい、地味でも読み応えのある本を、東京以外の土地でも紹介することが目的です。
地方ではイベントの規模も小さく、同人誌を作るにも部数的にオフセットが難しく、コピー誌が多くなります。地元のイベントしか知らない若い人も多く、オリジナルの同人誌でもこれだけクオリティの高い本が作れる、読み応えのある作品が描ける、という実物を見て、参考にしてもらいたいのです。
「出張委託」では1種類の本が1冊でも売れたら良い方というケースも多いのですが、そういう時ほど「一粒の種を蒔いた」という気持ちになります。買い手もサークル参加の描き手が多く、彼らがその本を見て「自分ももっと頑張ろう」という励みにしてもらえれば、と思うのです。
そうした各地方での少しづつの底上げを積み重ねて、全体のレベルアップにつなげてゆくことも、コミティアネットワークの役割の一つだと考えています。
実際に各地方を回っているとそれぞれの個性も体感できます。名古屋は今回、地元の専門学校とタイアップしてメイキング講座を行い、生徒達も多数参加して好評でした。新潟は何よりこのティアズマガジンでおなじみベルネさんのコミックワークショップ実地版が必見。そして、関西は今回ついに763サークル参加と、地方イベントとしては大きな規模になり、まだぐんぐん伸びています。
東京の常連サークルさんもよかったらぜひ、旅行がてらにでも各地のコミティアに参加してみませんか。新しい土地で新しい読者と出会うことは、きっと相互に刺激になると思います。そうした大きな意味での「循環」も、また、コミティアネットワークの目指した全体の活性化なのです。
さて、今回の会場内企画は第2回マンガ専攻大学・専門学校オープンカレッジ企画。昨年、好評だった学校企画が再登場します。とくに各校の出前実習・出前授業にはぜひ注目してください。同人作家の場合、独学でマンガの描き方を身につけた人が多いはず。「マンガを学ぶ」ことを体験できる貴重な機会であり、また新鮮な発見もあるものと思います。
最後になりましたが、今回のコミティアは直接2954・委託70のサークル・個人の描き手が参加しています。昨年の秋に比べると少し減って、惜しくも直接3千サークルに届きませんでした。これはやはり前回からの期間が短かったことと、昨年まで夏に出ていた落選分が秋にスライドしていたものが、通年2ホール開催により落選がなくなり、全体が平均化したと推測されます。いまのコミティアの規模が大分見えてきました。
そろそろ100回に向けてのカウントダウンが始まります。でも、全ては一回一回の積み重ね。その一回を大事にしなければ次にはつながりません。それは描くことも同じだなあと思っています。一期一会の出会いが今日もありますように。
2011年10月30日 コミティア実行委員会代表 中村公彦