今回はいろいろお伝えすることが山積みです。
まず、来年2017年より九州コミティアが発足することになりました。きっかけは今年3月に私(中村公彦)が「漫研アズ50周年展」のゲストに招かれて北九州漫画ミュージアムに行った際に、地元サークルの方から提案されて動き出したもの。北九州漫画ミュージアムも開催に協力してくれることになり、来年2月のプレ開催は同ミュージアムの展示室にて行われます。そして同年秋には会場を移して第1回(300スペース募集)を開催。以降は年1回ペースでの開催の予定しています。
ということでついに日本列島の、北は北海道コミティアから南は九州コミティアまで、コミティア全国ネットワークが広がることになりました。新しく生まれたコミティアの仲間にぜひ注目してください。
おかげ様で最近始まった北海道コミティア(2014年~)もみちのくコミティア(2015年~)も、順調に回を重ねてサークル数は増加傾向にあります。来年50回記念を迎える関西コミティアは、サークル数が増えて落選が出るようになり、来年の5月はインテックス大阪に進出します(1500スペース募集)。また名古屋コミティアもそろそろ会場のキャパ(500スペース)ギリギリの申込数になってきました。こうした状況を見るに、ここ数年の東京コミティアの規模拡大が、各地方での創作サークルの活性化に結びついているとしたらうれしいことです(開催が増えて日程がバッティングしがちなのが悩ましいですが…)。
創作を描きたい・読みたいという気持ちがあっても、まず発表する場所が無ければ、なかなか第一歩を踏み出せないもの。各地のコミティアがそうした欲求の受け皿になり、そこから新しい才能が生まれてくるのを大いに期待したいと思います。
さて、あらためて今回のコミティア118では、会場内企画が二つあります。
一つはこの11月12日に全国劇場にて公開されるアニメ映画「この世界の片隅に」の片渕須直監督と原作者のこうの史代さんのトークショー 。
昨年5月のコミティア会場では、クラウドファンディング応援企画として片渕監督のトークショーを行い、好評を博しました。その甲斐もあってか約4000万円の制作資金が集まり、大きなスターターとなったのは記憶に新しいところ。今回は公開直前企画として、片渕監督と原作者のこうの史代さんお二人のトークショーを開催します。こうのさんはかつてはコミティアの常連サークル参加者であっただけにうれしい登壇ですね。
原作の「この世界の片隅に」は、広島の軍都・呉を舞台に、主人公「すず」という一人の女性の目を通して、戦争に翻弄される市井の人々の生活を描いた作品。こうのさんらしい丁寧な日常描写と、大胆にして多様なマンガ表現手法を交え、多くの賞を受賞した傑作です(原作本は会場出展のジュンク堂書店で販売します。未読の方はぜひお求めください)。
一方の片渕監督は「日常」を描くために徹底的な下調べをする作風で、まさにベストマッチング。本作でも、戦時下の呉の資料を膨大に集め、何度も現地に足を運び、リアルな背景描写にこだわりました。実は試写を見させてもらいましたが、あのキャラクターたちがまさにその地に「生きている!」ことに驚き、後半はぼろぼろ泣きっぱなしでした。あらためて原作の世界観がどのようにアニメ映画化されたか、ぜひその当事者二人の声を聞いて確かめてもらいたいと思います。
もう一つの会場内企画は、毎年秋の恒例行事となった「海外マンガフェスタ2016」(主催・海外マンガフェスタ事務局)。世界中から多様多彩なマンガ作家が集まる「海外マンガの祭典」としてすっかり定着しました。海外と日本作家のトークショーやライブドローイング、海外の出版社や大使館の出展など興味深い企画が並び、個人参加ブース「アーティストアレイ」も53ブース・62作家と世界各国から大勢の作家が出展します。そこに生まれる異文化交流が大いに楽しみです。
そして、もう一つコミティア後の催しを紹介します。毎回コミティアの一週間後に行う見本誌読書会ですが、今回は文化庁メディア芸術祭20周年企画展の一環として、10月30日に同展会場となる「アーツ千代田3331」で行われることになりました)。
さらに当日の企画として、私(中村公彦)と、マンガ家のみなもと太郎さん、しりあがり寿さんの3人でトークイベントをさせてもらいます。題して「コミティアの30年・メ芸の20年~マンガの今とコミュニティーの変化」。もっとも敬愛する大先輩お二人とお話できるのが、私自身何より楽しみです。参加費無料(事前申込制)ですので、ぜひ多くの方のご来場をお待ちしております。
さて、今回のコミティアは秋開催としては2年ぶり2回目のビッグサイト3ホール開催です。ところが前回8月から間が2ヶ月しかない強行スケジュールとなりました。これは11月オープンの東京ビッグサイト東7・8ホールのこけら落としイベントの関係で開催日が前倒しになったため。会場の都合ばかりは如何ともしがたいところです。スタッフにとっても、新刊を作るサークルさんにとっても厳しい日程となりましたがどうかご容赦ください。
最後になりましたが、本日は4355のサークル・個人の方が参加しています。今日のこの日に、勿論東京近郊だけでなく日本全国から、さらには世界各国から、たくさんの描き手がこの場所を目指して集うようになりました。ただただ幸せなことだと思います。そして今日この場所で、あなたにとってまだ見ぬ新しい表現・作品との出会いがあることを、心から願っています。
2016年10月23日 コミティア実行委員会代表 中村公彦