西塚emピンキナ
- 職業…水彩画家
- 趣味…多肉植物の飼育
- コミティア歴…2010年から
- https://twitter.com/doxxxem
美しい草花に囲まれた可憐な少女、目を凝らすとそこには巨大なイモムシ。透明水彩で描かれた奇妙な組み合わせは、見る者の視線を惹き付けてやまない。水彩画家として個展を定期的に開催し、小説の挿画やマンガ家としても活躍する西塚emさんはその世界を「ソフトアングラ」という造語で称する。「アングラの『エログロ』『陰鬱』『痛み』のようなイメージをすごく希釈して口当たりを良くしたもの。異界への架け橋となり、ここから慣れていってもらうためのものです」。寄生虫、軟体生物、食虫植物、脳漿…通常はグロテスクと敬遠されがちなモチーフたちを「上品で華やかになるように色を選び」、美しく仕上げる作風にはファンも多い。
複雑な家庭環境の中、多感な思春期を過ごした西塚さん。『悪魔城ドラキュラ』シリーズに浸り、耽美・サブカル文化に傾倒していくうち、級友達から自分が浮いていることに気が付き始める。だが、そこで迎合することなく「好きなことを好きにやってやろう!と制服を改造していたら珍獣扱いされました(笑)」。そうしていくうちに他人とのコミュニケーションに壁を感じるようになった。意識が変わったのは高校時代、地元の同人誌即売会に参加したのがきっかけ。「そこで出していた本を購入してくれた美術部の後輩がいたんですが、後日『あのとき目がやばかった』と言われたんです」。せっかく作品を気に入って購入してくれたのに気分を害するような態度は良くないと、自分を見直した。
成人後は画家として各地で開催される個展やグループ展、同人誌即売会などに参加しつつ、地道に仕事を得ていった。東京のコミティアへの参加は10年。金銭面の苦労もあり、絵を描くことを諦めかけた時期もあったが、その活動の中で得られた受け手の反応や先輩達の言葉に勇気づけられた。
16年には、それまでの多くを語らないイラストの作風から一転、ホラーマンガ『悪夢録』を同人誌で発行。マンガ家としての道を切り開く契機にもなった同作は、激しい感情や憎悪をむき出しにする登場人物達が描かれた衝撃作だ。「実在する人が辛い目にあってるのは見たくないですが、非実在だと苦しんでる姿を見たい人は…意外と多いのでは」という言葉にはどこか説得力を感じる。18年にはそのキャラクターが一部登場する『蟲籠奇譚』(全3巻)を『コミックDAYS』で連載。転校生の夢飼ねねが、虫愛づる生物部の部長に取り込まれていく様を描いた。とことん蟲への愛を突き詰め、コミカルなやりとりを交えつつも、ひとりの人間の心の奥底をえぐり出すような描写は、氏の新境地とも言える。
多方面での仕事を引き受け、活躍するための秘訣は「〆切を守ることが一番ですね…」と謙虚だが、その創作活動は常にパワフルだ。最後はそれを裏付ける印象的な言葉で締めよう。「まだ世の中に存在してないものを作る快感、脳汁、宣教、自分のカワイイを誰にも邪魔されずに描けるのさいこう!」
複雑な家庭環境の中、多感な思春期を過ごした西塚さん。『悪魔城ドラキュラ』シリーズに浸り、耽美・サブカル文化に傾倒していくうち、級友達から自分が浮いていることに気が付き始める。だが、そこで迎合することなく「好きなことを好きにやってやろう!と制服を改造していたら珍獣扱いされました(笑)」。そうしていくうちに他人とのコミュニケーションに壁を感じるようになった。意識が変わったのは高校時代、地元の同人誌即売会に参加したのがきっかけ。「そこで出していた本を購入してくれた美術部の後輩がいたんですが、後日『あのとき目がやばかった』と言われたんです」。せっかく作品を気に入って購入してくれたのに気分を害するような態度は良くないと、自分を見直した。
成人後は画家として各地で開催される個展やグループ展、同人誌即売会などに参加しつつ、地道に仕事を得ていった。東京のコミティアへの参加は10年。金銭面の苦労もあり、絵を描くことを諦めかけた時期もあったが、その活動の中で得られた受け手の反応や先輩達の言葉に勇気づけられた。
16年には、それまでの多くを語らないイラストの作風から一転、ホラーマンガ『悪夢録』を同人誌で発行。マンガ家としての道を切り開く契機にもなった同作は、激しい感情や憎悪をむき出しにする登場人物達が描かれた衝撃作だ。「実在する人が辛い目にあってるのは見たくないですが、非実在だと苦しんでる姿を見たい人は…意外と多いのでは」という言葉にはどこか説得力を感じる。18年にはそのキャラクターが一部登場する『蟲籠奇譚』(全3巻)を『コミックDAYS』で連載。転校生の夢飼ねねが、虫愛づる生物部の部長に取り込まれていく様を描いた。とことん蟲への愛を突き詰め、コミカルなやりとりを交えつつも、ひとりの人間の心の奥底をえぐり出すような描写は、氏の新境地とも言える。
多方面での仕事を引き受け、活躍するための秘訣は「〆切を守ることが一番ですね…」と謙虚だが、その創作活動は常にパワフルだ。最後はそれを裏付ける印象的な言葉で締めよう。「まだ世の中に存在してないものを作る快感、脳汁、宣教、自分のカワイイを誰にも邪魔されずに描けるのさいこう!」
TEXT /JUNKI TERAMOTO ティアズマガジン129に収録