毛塚了一郎住処
- 職業…マンガ家
- 趣味…レコード屋巡り
- コミティア歴…コミティア103より
- http://tsuinosumica.web.fc2.com/
「街のレコード屋」が舞台の『てれぴんレコーズ』、「民俗学に出る妖怪」を女子高生に置き換えた『フタクチ』…。普通の若者による気の置けない会話劇のモチーフは、毛塚了一郎さんが「自分の趣味」と語るものばかりだ。そればかりか、商業連載が始まった現在でも「描いていて辛いと思ったことはないです」と、漫画作りすら飄々と楽しむ。そこから生まれる作品は、雰囲気溢れる装丁も相まって、どこか温かみを感じさせる。
多趣味な祖父の影響を受けて育った。「レコードや漫画が家に沢山あって、遊びに行くたびに手塚治虫や横山光輝を読んでました」。当時、漫画は描くより読む方が好きだったという。「絵を描くのは好きでしたが、漫画を一本描き上げようとは思いませんでした」
そんな毛塚さんの転機は、高校で所属した将棋部で部誌を作った経験だった。「挿絵を描いたり編集作業をして、みんなで作ったものを一冊の本にするのが楽しかったんです」と、まずはブックデザインに興味を持った。そして美大では、腰を据えて漫画を描き始める。「作品発表の機会が多く、それなら漫画を描いてみよう、と。『人より読んでるから描けるだろう』と根拠もなく思ってました。当然上手くできなかったのですが、次はもっと良く描きたい!という意欲が湧きました」
「自分で装丁した本を作って発表したい」——。この想いが同人誌の制作に繋がったのは、大学卒業間近の13年。「安倍吉俊さんが出展すると聞いて、初めてコミティアに行きました。そうしたら自分の作品も受け入れてもらえそうな雰囲気を感じたんです」。早速、次のコミティアに高校時代の友人・ヒラヤマハルタカさんとサークルで参加。「最初は遊び紙も糊で貼り付けたコピー誌でした。20数部が完売してすごく達成感がありましたね」
極地と雪上車を取り上げ、P&Rに掲載された『南極サファラー』(15年)など「その時々で興味のあるものを描いてきた」と毛塚さん。中でも特に好きなレコードの作品は前から描きたかったが、いざストーリーにするまで数年を要したという。「マニアックになりすぎないよう、あくまで『音楽が好きなキャラクターの行動で話が動く』漫画にしたかったんです」。そして16年に刊行したのが、現在も続く『てれぴんレコーズ』シリーズ。見た目もレコードジャケットに似せるなどこだわった。すると読者の反応も良く「2巻を描いた時に『続けられるな』と感じました。自分の好きなものと、漫画として面白いストーリーの歯車が上手く噛み合いました」。さらに本作が縁となり、昨年より『青騎士』(KADOKAWA)で初商業作「音盤紀行」の連載を開始。趣味が仕事に結びついた。
今後については「旅行が好きなので、ロードムービー的な長編を描きたい」と意気込む。その一方で、「時間があれば、また自家製本で無駄に凝った本も作ってみたいですね」。『好き』を突き詰めた先にあるからこそ、魅力を放つ漫画のあり方。その理想形に向かい、毛塚さんは今日も歩みを進める。
多趣味な祖父の影響を受けて育った。「レコードや漫画が家に沢山あって、遊びに行くたびに手塚治虫や横山光輝を読んでました」。当時、漫画は描くより読む方が好きだったという。「絵を描くのは好きでしたが、漫画を一本描き上げようとは思いませんでした」
そんな毛塚さんの転機は、高校で所属した将棋部で部誌を作った経験だった。「挿絵を描いたり編集作業をして、みんなで作ったものを一冊の本にするのが楽しかったんです」と、まずはブックデザインに興味を持った。そして美大では、腰を据えて漫画を描き始める。「作品発表の機会が多く、それなら漫画を描いてみよう、と。『人より読んでるから描けるだろう』と根拠もなく思ってました。当然上手くできなかったのですが、次はもっと良く描きたい!という意欲が湧きました」
「自分で装丁した本を作って発表したい」——。この想いが同人誌の制作に繋がったのは、大学卒業間近の13年。「安倍吉俊さんが出展すると聞いて、初めてコミティアに行きました。そうしたら自分の作品も受け入れてもらえそうな雰囲気を感じたんです」。早速、次のコミティアに高校時代の友人・ヒラヤマハルタカさんとサークルで参加。「最初は遊び紙も糊で貼り付けたコピー誌でした。20数部が完売してすごく達成感がありましたね」
極地と雪上車を取り上げ、P&Rに掲載された『南極サファラー』(15年)など「その時々で興味のあるものを描いてきた」と毛塚さん。中でも特に好きなレコードの作品は前から描きたかったが、いざストーリーにするまで数年を要したという。「マニアックになりすぎないよう、あくまで『音楽が好きなキャラクターの行動で話が動く』漫画にしたかったんです」。そして16年に刊行したのが、現在も続く『てれぴんレコーズ』シリーズ。見た目もレコードジャケットに似せるなどこだわった。すると読者の反応も良く「2巻を描いた時に『続けられるな』と感じました。自分の好きなものと、漫画として面白いストーリーの歯車が上手く噛み合いました」。さらに本作が縁となり、昨年より『青騎士』(KADOKAWA)で初商業作「音盤紀行」の連載を開始。趣味が仕事に結びついた。
今後については「旅行が好きなので、ロードムービー的な長編を描きたい」と意気込む。その一方で、「時間があれば、また自家製本で無駄に凝った本も作ってみたいですね」。『好き』を突き詰めた先にあるからこそ、魅力を放つ漫画のあり方。その理想形に向かい、毛塚さんは今日も歩みを進める。
TEXT / HIROYUKI KUROSU ティアズマガジン140に収録