COMITIA140 ごあいさつ

魂と魂が握手するような出会いのために

久し振りのGWのコミティアにようこそ。東京オリンピック・パラリンピックや緊急事態宣言などの影響で、5月の開催はなんと3年ぶりとなります。

長引くコロナ禍は3年目に入りました。2020年の流行当初はイベントの開催中止が続き、このままコミティアを続けられなくなるかもしれない、という不安が強くありました。その後、ウイルスに関する研究が進み、新しいワクチンも普及して、ウィズコロナの日常が始まりました。コミティアを始めとする同人誌即売会も、自治体や会場のガイドラインに沿ってしっかりと感染症対策を行いながら、なんとか開催を継続できています。

それでもウイルスの変異による感染症の新しい波はくり返し訪れ、開催日当日やサークル参加申込の〆切前後における感染者数の増減により、イベントの来場者数や参加サークル数がダイレクトに影響を受けることは避けられません。東京ビッグサイトの会場予約開始はおよそ1年前ですが、今の時代に1年先がどうなっているかは誰にも分からないのです。

私たちスタッフもこの先が読めない時代に、様々なパターンの来場者数予測を立て、感染症対策に必要な備品や運用方法を検討し、大人数に対応できるスムーズな入場ルートを試行錯誤し、随時更新される自治体や会場のガイドラインのチェックや関連提出書類の作成に頭を悩ませながら、目の前のイベント開催に向けて日々懸命に準備を進めています。

サークル参加する方たちも、様々なリスクを含みつつ申込をしてくれて、執筆スケジュールの見通しも立てづらい中、このように参加してもらえることに心から感謝します。一つだけ好材料は、巣ごもり需要もあってか各種書店やWEBサービスの通販システムが充実して、電子版も含めて同人誌の販売が便利になったこと。これはコロナ禍の影響による進化と言ってよいでしょう。

こうした過酷な条件の下でも、なぜ私たちはコミティアを開催し、そこにたくさんの人が集うのか。それはこのリアルの場でしか得られないものがあるから、としか言いようがありません。

多くの描き手がSNSを利用し、作品発表やその反応のやり取りをオンラインで行えるようになっても、描き手と読み手が直接出会い、作品をやり取りする手応えばかりは何物にも代替できないものです。それはこのコロナ禍で何度かコミティアが開催中止になり、やっと再開できた時の喜びでより強く実感しました。また一つの空間にたくさんの表現者が集まり、同時に作品を発表することの高揚感も、創作活動への大きな刺激になっているでしょう。

コミティアはそこに発表される作品がなければ成り立ちません。描き手はその日に向けて作品を描き、本という形にして会場に持ち寄る。読み手は好きな本をその作者から直接購入して読む。そうした消費行動が、描き手にとっての創作意欲と活動支援につながり、新たな作品を生み出すエネルギーとなる。それが同人誌即売会における「消費と創造の循環」のシステムです。

コミティアが求めるものは「魂と魂が握手するような出会い」と言い続けてきたけれど(非接触を想定したものはありませんが)、開催する度にその価値と重みを噛みしめています。私たちスタッフは可能な限りその場所を守ってゆく所存です。

さて、いくつかお知らせです。

今回の会場内企画は「SS学園祭」「漫画家ミライ会議 出張版」の2つ。これまでコミティアに接点のなかった人たちと出会うきっかけになればと思います。

そして今回もそれぞれの事情で参加できないスタッフが多く、協力イベント団体のJガーデンや地方コミティアのスタッフ、そしてこのカタログの印刷をお願いしている緑陽社の社員の皆さんが応援に来てくれています。ご厚意に心から御礼を申し上げます。スタッフは切実に募集中なので、興味のある方はこちらをご覧ください。→スタッフ募集

5月5日の東京コミティア140の後には、5月22日/関西コミティア64 、5月29日/新潟コミティア54 、6月5日/北海道コミティア15 、6月12日/みちのくコミティア8 と、4週連続で地方コミティアの開催が続きます(P70参照)。コロナによる開催中止などで、1年半以上間隔が空いてしまったイベントもあります。それぞれの土地で開催を待ちわびる人たちがたくさんおられるでしょう。私も東京の参加サークルさんの委託本を持って、各イベントに参加します。ぜひ会場でお会いしましょう。

さらにもう一つ報告。長年この『ティアズマガジン』で「belneのコミックワークショップ誌上版」を執筆いただいているマンガ家/開志専門職大学アニメ・マンガ学部教授のbelneさんが、第25回文化庁メディア芸術祭の功労賞を受賞されました。心よりお祝い申し上げます。私からのお祝いメッセージはティアズマガジン140のP64に書かせてもらいましたので、ぜひお読みください。

最後になりましたが本日は3034のサークル・個人の方が参加しています。何もかもが激変する時代に、変わることと変わらないことを見定める難しさを痛感しています。それでもコミティアの原点が「作品を介した描き手と読み手の出会い」であることはけして変わりません。今日という日に新しいよき出会いがあることを心から願っています。

2022年5月5日 コミティア実行委員会代表 中村公彦