酢豚ゆうき酢豚ゆうき
- 職業…漫画家
- 趣味…健康について調べること
- コミティア歴…2010年ごろから
- https://twitter.com/yukikanayama20
ドラキュラ、メデューサ、狼少年といった人外のキャラクターが次々登場する『月出づる街の人々』。だがそこにいるのは、時に悩み、時に楽しく過ごす等身大の人物たちだ。「突飛な出来事が起きなくても、ちょっと不思議な世界でキャラクターの人間らしさを描くだけでも、作品の魅力は出せるはず」と話すように、酢豚ゆうきさんは彼らの「日常」を、驚くほど自然に描き出す。
「子供の頃から『漫画家になりたい』と漠然と思ってはいました」という酢豚さん。高校までは殆ど漫画を描いていなかったという。だが大学時代に、小学校の友人が雑誌に漫画を持ち込んでいることを偶然知ったのが大きな転機となる。刺激を受けた勢いで一本漫画を描き上げ、青年誌の編集部に持ち込んだ。その後はアシスタントとして多忙な日々を送る一方で、いざ自分の作品となると描きたいものが見出せない時期が続いた。「『漫画家になるために漫画を描かなければ』という思いが先行し過ぎて、半年に1本くらいのネームしか描けませんでした」
創作の意味を見失いかけた酢豚さんにとって、「描くのが楽しくなった」と振り返るのが同人活動だった。「特に友人に誘われて始めた『ガールズ&パンツァー』の二次創作は大きかったです。イベントに出た時、読んでくれる人がこんなにいるんだ、という実感が生まれました」。並行して「自分の成長のため」と10年より参加していたコミティアでも、納得の行くオリジナル作品が描けるようになった。14年には自我を持つ生ガキと居酒屋の客との交流を描いた『生ガキちゃん』を発表。題名だけでも強烈な印象のギャグ作品だが、「人間ではない変わったキャラクターが、当たり前のように人として暮らしている」という作風は既に芽生えていた。
「作品を面白く描くというよりは、出てくるキャラクターに幸せになってほしい」との思いで、19年にスタートしたのが『月出づる街の人々』シリーズだ。「主人公が1話ごとに変わるので、『ここが魅力』とアピールしにくい作品」と自己評価する。最初こそ10部ほどしか売れなかったというが、ネットでの反応が励みになった。「Twitterで既刊をアップしたら『雰囲気がほっこりしていて好き』っていう感想を多く頂いて。この方向で描き続けて良いんだ、と自信を持ちました」。次第に読者からの人気を得た同作。今年より「月刊アクション」(双葉社)にて連載が始まったが、「敢えて商業であることを意識しないようにしています」と、同人誌の時と同様、発表後のSNS上への全編公開も継続。商業と同人の垣根を超える、戦略的なアプローチだ。「たくさんの人に読んでもらって、この作品の世界に浸って安らいでほしいですね」
「登場人物の暮らしを妄想することで、何てことのない自分自身の生活も楽しくなります」。どうやら、酢豚さんの作品で幸せになっているのはキャラクターのみに留まらないらしい。今後もその眼差しで、全ての人に優しく寄り添う物語を紡いでいってもらいたい。
「子供の頃から『漫画家になりたい』と漠然と思ってはいました」という酢豚さん。高校までは殆ど漫画を描いていなかったという。だが大学時代に、小学校の友人が雑誌に漫画を持ち込んでいることを偶然知ったのが大きな転機となる。刺激を受けた勢いで一本漫画を描き上げ、青年誌の編集部に持ち込んだ。その後はアシスタントとして多忙な日々を送る一方で、いざ自分の作品となると描きたいものが見出せない時期が続いた。「『漫画家になるために漫画を描かなければ』という思いが先行し過ぎて、半年に1本くらいのネームしか描けませんでした」
創作の意味を見失いかけた酢豚さんにとって、「描くのが楽しくなった」と振り返るのが同人活動だった。「特に友人に誘われて始めた『ガールズ&パンツァー』の二次創作は大きかったです。イベントに出た時、読んでくれる人がこんなにいるんだ、という実感が生まれました」。並行して「自分の成長のため」と10年より参加していたコミティアでも、納得の行くオリジナル作品が描けるようになった。14年には自我を持つ生ガキと居酒屋の客との交流を描いた『生ガキちゃん』を発表。題名だけでも強烈な印象のギャグ作品だが、「人間ではない変わったキャラクターが、当たり前のように人として暮らしている」という作風は既に芽生えていた。
「作品を面白く描くというよりは、出てくるキャラクターに幸せになってほしい」との思いで、19年にスタートしたのが『月出づる街の人々』シリーズだ。「主人公が1話ごとに変わるので、『ここが魅力』とアピールしにくい作品」と自己評価する。最初こそ10部ほどしか売れなかったというが、ネットでの反応が励みになった。「Twitterで既刊をアップしたら『雰囲気がほっこりしていて好き』っていう感想を多く頂いて。この方向で描き続けて良いんだ、と自信を持ちました」。次第に読者からの人気を得た同作。今年より「月刊アクション」(双葉社)にて連載が始まったが、「敢えて商業であることを意識しないようにしています」と、同人誌の時と同様、発表後のSNS上への全編公開も継続。商業と同人の垣根を超える、戦略的なアプローチだ。「たくさんの人に読んでもらって、この作品の世界に浸って安らいでほしいですね」
「登場人物の暮らしを妄想することで、何てことのない自分自身の生活も楽しくなります」。どうやら、酢豚さんの作品で幸せになっているのはキャラクターのみに留まらないらしい。今後もその眼差しで、全ての人に優しく寄り添う物語を紡いでいってもらいたい。
TEXT / HIROYUKI KUROSU ティアズマガジン141に収録