COMITIA145 ごあいさつ

3年越しに迎える「夏」

この「ごあいさつ」を書いている時点で日本各地で災害級の猛暑が続いており、9月3日当日の天気が今から心配です。熱中症にはくれぐれも気をつけて、こまめな水分・塩分補給をするなど予防対策をお願いします。一方で、この問題を最大の懸念点と考えられることは、日常が戻ってきた証のようにも感じています。これまでの約3年間、私たちが直面してきた最大の課題は「そもそもイベントを開催できるのか」、「どういう形なら開催を許されるのか」だったからです。
今年の5月8日に新型コロナウイルス感染症の位置づけが「5類感染症」に移行したことで、イベントの開催制限が撤廃。これまで行ってきた多くの対策や行政への申請等も不要となり、開催中止のリスクも大幅に減りました。全参加者に行っていた検温と、検温済の証としてのリストバンド運用は今回から無くなっています。こうした条件で開催できるのは2020年2月のコミティア131以来です。入場無料を適用する年齢も3歳以下から12歳以下に変更。さらに閉会1時間前の15時からは久しぶりに入場フリー(入場無料)の運用も行います。
もちろん新型コロナウイルス感染症は無くなったわけではなく、引き続き注意が必要なことには変わりはありません。その他の感染症予防・対策としても、手洗い、うがい、咳エチケットなどは有効です。周囲の方へ気遣いを持ってご参加をお願いします。
そうした状況の改善もあり、今回のコミティアの参加サークル数は夏の開催回としては過去最多の4165となりました。これまでの最多は2019年8月のコミティア129で4017サークル。昨年夏のサークル数は3305で、「完全に人が戻ることはない」という悲観論もありましたので、想定以上の回復・急増に驚いています。この数値からもサークル参加のハードルが下がったことは明らかです。様々な事情で、意欲があっても参加できなかった人は多かったのでしょう。開催中止や参加者の激減に耐えながらずっと続けてきたからこその結果だと思うと、素直に嬉しいです。さらにサークルの初参加の割合は25%で、近年の最高値。コロナ明けを見据え、初心者向けの案内を増やしてきた努力が実を結んだと思っています。

さて、今回行う2つの会場内企画についても紹介していきましょう。「ちばてつや×鳥嶋和彦 公開対談『マンガの話』」は、元『週刊少年ジャンプ』編集長・鳥嶋和彦さんの著書『Dr.マシリト 最強漫画術』(集英社)の出版に絡めて企画されたもの。…という形ではあるのですが、実はこのお二人の対談は開催中止になってしまった2020年5月のコミティア132extraの会場内イベントとして予定されていた幻の企画でした。お二人ともコミティアに浅からぬ縁があったことに加え、鳥嶋さんはちば先生の漫画を読んで、漫画のコツを掴んだと言うくらいの大ファン。にも関わらずこれまでお仕事などで接点は無い…ということで提案し、快諾もいただいていましたが断念。そこから色々な偶然が重なり、今回ようやく実現することができました。コミティアのアフターコロナを飾るのに、これほど相応しい企画は他にありません。漫画家、漫画編集者として輝かしい実績を持ったレジェンドのお二人が何を語るのか、ぜひ注目してください。
もう1つの企画は朝日新聞の4コマ「ののちゃん」で知られる漫画家・いしいひさいちさんが昨年2022年8月に自費出版した作品『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』の原画展。商業流通していない作品にも関わらず、発行されるやいなやネットを通じてその評判が広がり、各メディアで大きく取り上げられ、季刊カルチャー誌『フリースタイル』の名物特集「THE BEST MANGA 2023 このマンガを読め!」では1位を獲得。この1年で最も注目された同人誌ではないかと思います。『ティアズマガジン143』の作品感想紹介コーナー「Push&Review」でも大きく取り扱いました。今回の原画展は氏の軽妙洒脱な筆致を間近で見られる貴重な機会になると思います。企画の経緯については今回のカタログの「会長 中村公彦のコミティア的日常」でも触れられています。いしいさん御本人は不在ですが「(笑)いしい商店」「(笑)ひさいち商店」としてもサークル参加(スペースNo.て33)し、『ROCA』の新作が初売りされる予定だそうです。

そんなわけで、今回のコミティアは失われた3年の時間を取り戻し、新しい歴史の一歩を踏み出す回となるでしょう。これまでの苦労をばねにしつつ、前向きな気持ちで臨みたいと思います。9月の初めとはいえ、まだ厳しい暑さが続いていることでしょう。参加者の皆さんには体調に気をつけつつ、特別なコミティアの一日を存分に楽しんで貰えたら幸いです。今日過ごした時間が貴方の記憶に残る、素晴らしい思い出になることを心から願っています。

2023年9月3日
コミティア実行委員会代表 吉田雄平