zinbei瀝青の海
- 職業…漫画家
- 趣味…旅行・温泉、民俗学、映画
- コミティア歴…コミティア92より
- https://lit.link/zinbei
実際に見たことはないけど、どこにでもありそうな景色。そこに佇む、時に笑顔を浮かべ、時に沈んだ表情の女の子。そんな日常的なワンシーンを、zinbeiさんは柔和な線と色彩で優しく切り取る。イラストのみならずマンガでも活躍する氏の作品を読むと、身近な題材や登場人物の行動に、デジャブにも似た共感を覚えてやまない。
出身は山形県酒田市。雄大な自然に囲まれて育った。「娯楽が少ない土地だったので、『週刊少年ジャンプ』や『ちゃお』といった雑誌を家の中で回し読みするのが楽しみでした」。幼い頃からいろんなジャンルのマンガに触れてきたという。絵を描くのが好きだった家族から受けた影響は大きく、「小学校中学年くらいの時、兄からペンタブを五千円で譲ってもらったんですね。『パソコンでも絵が描けるんだ、すごい』って驚いて、絵を仕事にしたい、とはっきり思うきっかけになりました」と振り返る。デジタルでの作画に親しむまま、中高時代にはイラスト投稿SNS『drawr』に参加するようになったのは自然な流れだった。
初めて同人誌に寄稿したのは高校生の時。「『drawr』で知り合った作家さんの縁で、コミティア92に出す合同誌に参加したんです。東京に行くのも初めてで、こんな大規模なイベントがあるんだと圧倒されました」。描き上げたのは、本格的なコマ割りを駆使した十数ページのSFマンガ。腰を据えてマンガに取り組んだのはこの時が初めてというから驚きだ。「自分の好きな絵を細かく沢山描けるのが、イラストとは一味違って楽しかったですね」
その後は個人でもサークルを立ち上げ、現在に至るまでコミティアに参加している。特徴的なのは、発表する作品のスタイルが毎回多様なことだ。その内容はイラスト集やラフスケッチ、短編マンガなど多岐に渡る。一見捉えどころがないようにも思えるが、その真意は「その時描きたいものを描くことを大事にしている」からだという。たとえば22年発表のフルカラー画集『Hydrosphere』収録の一部作品や今年5月の「ティアズマガジン144」表紙では、背景に想い出深い山形の風景をさりげなく盛り込んだ。「創作する上での大きなテーマが、『自分が何が好きか』を発信し続けることなんです」。その姿勢は編集者の目にも止まり、現在は「GetNavi web」で『ほろ酔い道草学概論』を、「やわらかスピリッツ」で『酒と鬼は二合まで』(原作:羽柴実里さん)を連載中だ。「大好きなお酒をテーマに商業マンガを描けているので、今までの活動がひとつ結実した思いです」
商業連載で多忙な日々を送りながらも、今後も興味の赴くままに同人活動を続けていく。「読者の方が感想を返してくれると、その反響で自分の中の『好き』の形がより明確になり、再発見したりもします」。作品を通じてzinbeiさんと気持ちが共鳴し合い、ともすればそれがまだ見ぬ作品の源となる…。読み手としてこれ以上に楽しみなことはない。
出身は山形県酒田市。雄大な自然に囲まれて育った。「娯楽が少ない土地だったので、『週刊少年ジャンプ』や『ちゃお』といった雑誌を家の中で回し読みするのが楽しみでした」。幼い頃からいろんなジャンルのマンガに触れてきたという。絵を描くのが好きだった家族から受けた影響は大きく、「小学校中学年くらいの時、兄からペンタブを五千円で譲ってもらったんですね。『パソコンでも絵が描けるんだ、すごい』って驚いて、絵を仕事にしたい、とはっきり思うきっかけになりました」と振り返る。デジタルでの作画に親しむまま、中高時代にはイラスト投稿SNS『drawr』に参加するようになったのは自然な流れだった。
初めて同人誌に寄稿したのは高校生の時。「『drawr』で知り合った作家さんの縁で、コミティア92に出す合同誌に参加したんです。東京に行くのも初めてで、こんな大規模なイベントがあるんだと圧倒されました」。描き上げたのは、本格的なコマ割りを駆使した十数ページのSFマンガ。腰を据えてマンガに取り組んだのはこの時が初めてというから驚きだ。「自分の好きな絵を細かく沢山描けるのが、イラストとは一味違って楽しかったですね」
その後は個人でもサークルを立ち上げ、現在に至るまでコミティアに参加している。特徴的なのは、発表する作品のスタイルが毎回多様なことだ。その内容はイラスト集やラフスケッチ、短編マンガなど多岐に渡る。一見捉えどころがないようにも思えるが、その真意は「その時描きたいものを描くことを大事にしている」からだという。たとえば22年発表のフルカラー画集『Hydrosphere』収録の一部作品や今年5月の「ティアズマガジン144」表紙では、背景に想い出深い山形の風景をさりげなく盛り込んだ。「創作する上での大きなテーマが、『自分が何が好きか』を発信し続けることなんです」。その姿勢は編集者の目にも止まり、現在は「GetNavi web」で『ほろ酔い道草学概論』を、「やわらかスピリッツ」で『酒と鬼は二合まで』(原作:羽柴実里さん)を連載中だ。「大好きなお酒をテーマに商業マンガを描けているので、今までの活動がひとつ結実した思いです」
商業連載で多忙な日々を送りながらも、今後も興味の赴くままに同人活動を続けていく。「読者の方が感想を返してくれると、その反響で自分の中の『好き』の形がより明確になり、再発見したりもします」。作品を通じてzinbeiさんと気持ちが共鳴し合い、ともすればそれがまだ見ぬ作品の源となる…。読み手としてこれ以上に楽しみなことはない。
TEXT / HIROYUKI KUROSU ティアズマガジン146に収録