サークルインタビュー FrontView

ケロcomorebi notes

コミティアの申し込み〆切を忘れないための歌 vol.144-148
CD/500円
職業…エンジニア、デザイナー、作曲家、漫画家、etc...
趣味…人の期待を斜め上に裏切ること
コミティア歴…コミティア138からX
https://twitter.com/kero_BIRUGE
ある時は4コマ作家。ある時はストーリーマンガ作家。そしてある時はイラストを交えた同人音楽家…。「いろいろ作っている人だ、って思われたい。それが自分の強みです」と、ジャンルに捉われず活躍するケロさん。「今回はどんな作品を生み出せるのか、自分自身楽しみにしています」
絵を描くことには幼少期から親しんできた。「架空のRPGのスケッチや、自作のカードゲームを描くのが好きでした」。一方で作曲に興味を持ち出したのは20歳になる手前。「ちょうどその頃にボーカロイドを知ったのが大きかったです」。イラストと親和性が高いジャンルだったこともプラスに働いた。「自作の曲にイラストを付けて、ニコニコ動画に上げたら結構反応が良かったんです」。マンガを描き始めたのもその延長線上だった。「ボカロのオンリーイベントにサークル参加した時、曲と世界観がリンクしたマンガをセットで作りました。両方作っている人は珍しかったし、実際かなり手応えを感じましたね」
その後はしばらくネット上での作曲活動を中心としていたが、21年には「ボカロの熱も落ち着いたので、今度はマンガの方に腰を据えて取り組んでみよう」と、コミティアに参加し始めた。初参加ではRPG世界をモチーフにしたコメディ『剣と魔法とハローワーク』を発表する。「初めて原作無しで、一から話を作ったので苦労しました。知り合いもいないし売れないだろうな、と思ったら50部も売れて、『何かコミティアに恩返しがしたい』と思うほど嬉しかったです」。その想いが形になったのが、Twitter(現X)でアップしており、今では毎回恒例となっている『コミティアの申し込み〆切を忘れないための歌』だという。「初めは自分のための備忘録といった面もあったのですが、結構反響があったので自主的に作り続けています」。回ごとに異なる曲調で隠れた人気を博す、『非公式の風物詩』とでも言うべき名物作品となっている。
「マンガか音楽、どちらかを中心にやっているっていう意識は無くて、その時々作りたいものを作っている、というイメージです」。その言葉通り、コミティアでは『ネコとハコニワ』『畦道で会えたら』といったマンガ作品を相次いで発表する傍ら、パソコンでの作曲についてマンガ形式で紹介するコラム『漫画家ちゃんが作曲をするようです』をティアズマガジン143〜146で連載。「マンガでは、多くの人に面白いと思ってもらえるような正統派のストーリーを意識していますし、作曲でもシンプルなコード進行で気持ちよく最後まで聴ける曲を目指しています」と語るように、創作という点では相通ずる所も多いようだ。
「その時楽しいと思ったことを全力でやるタイプだったお陰で、音楽もマンガもやれている今があると思います。今後も新しい分野を見つけていきたい」と、持ち前の好奇心で活動を続けていく。「将来、人生のスキルとか作風が全部一つになった凄い作品を作ってみたいですね」。そんな野望も、ケロさんであればいつしか成就させているに違いない。

TEXT / HIROYUKI KUROSU ティアズマガジン148に収録

もくはちもくはちです。

イゾラ辺境支局より
A5/52P/500円
職業…マンガ家
趣味…マンガを描くこと
コミティア歴…コミティア125から
https://twitter.com/moku_hachi
日々の暮らしや仕事、家族のことで困難に直面し思い悩む、誰もが共感出来る人々。彼らが逆境に立ち向かい、また前へと歩き出す様を、もくはちさんは誠実かつ丁寧に描き出す。「人生の中で、誰もが輝く場面があるはずです。そういう人を応援したくなるお話を描きたいと思っています」
マンガを描き始めたのは大学生の頃。「SNS上の知人に影響されました。とあるアニメにドハマりしていて、自分の同人誌にありあまる情熱をぶつけてました」。その気持ちは18年に一次創作へ活動の主軸を移した後も変わらなかった。「二次創作の方は不完全燃焼で終わってしまった感があったんです。それならば昔の自分を成仏させるくらいの気合で描こう、と」。初参加のコミティア125で発表した、結婚式のため奮闘するウェディングプランナーを描く『ブーケに恋して』は96ページに及ぶ大作。200部が売れ、ティアズマガジンのP&Rにも紹介された。「すぐ読んで『めちゃくちゃ良かったです』とスペースまで感想を伝えてくれた方がいたんです。読者と作者の距離感や、創作に対する価値観が近いイベントだと感じましたね」
その後も読み応えのある作品を発表し精力的に活動を続けるが、現在の作風に至るきっかけとなったのは、コミティア128発表の『サイリウム・パパ!』だと振り返る。人気が伸び悩むアイドル候補生である娘との関係に葛藤する父親を描いたこの作品。「当時、私生活でいろいろと悩むことが多かったんです。そこでいっそ読者に楽しんでもらうより、自分を励ますスタンスで描いてみよう、と思いました」。結果的にはより地に足の付いた人物描写となり、同作品に共感を覚える読者も多かった。「意識しないうちに、読んだ人全員を応援するような形になっていたのかもしれません」
その後は生活環境の変化に加え、子どもが産まれたことによる育児の影響で、数年間同人活動からは遠ざかる。久々にコミティアに参加したのは22年の時。赤ちゃんの子育てに奮闘する親を主人公とした『或る魔女の子』を発表した。過去作とは異なるファンタジー作品に仕上がったが、その理由は「まずコンセプトやテーマを決めてから、それを活かせるジャンルを決めている」から。「コンセプトが上手く伝わらないな、と思ったらネーム段階で作品ごとボツにして、最初からやり直すこともしばしばです」という姿勢から生み出された本作は、『魔女のすくすく異世界育児』と改題した上で初の商業連載に繋がっている(少年画報社「ヤングキングラムダ」連載中)。
「昨日描いた原稿でも、今日見るともう拙くて直視できないことがあります。過去作で満足せず、もっと良い作品を描いていきたいです」。そう語るまっすぐな瞳は、まさにもくはちさんの作品に出てくる人物と重なる。その中で生み出されるささやかなエールは、必ず読者の背中を押してくれるはずだ。

TEXT / KOUTARO HASHIMOTO ティアズマガジン148に収録

田滝ききき田滝ききき

セックスの誘い方まとめ 2
A5/124P/1000円
職業…マンガ家
趣味…物件情報を見る、猫と過ごす
コミティア歴…7年
https://twitter.com/ttk3k
性欲旺盛な女子が男子へのアプローチに失敗し続ける『セックスの誘い方』シリーズ。女性の自慰を多彩に描いた『石見さんのGライフ』(竹書房)。「下ネタがこの世で一番面白い。それ以外のことを描く発想はありません」と断言する田滝きききさんは一貫して性をテーマにしたギャグマンガを描く。扇情的でなくカラっとしており、笑えるのに真剣さもある作風が特徴だ。
物心ついた頃から絵を描くのが好きで、夢はマンガ家。幼少期は『セーラームーン』、小学時代は『満月をさがして』『こどものおもちゃ』『サディスティック・19』などの少女マンガで育つ。中学からは『りぼん』の「まんがスクール」に興味を持ち、「私も頑張ろう」と夢に向かってデッサンを勉強した。
高校は美術系へ実技試験満点で入学し、順風満帆に思えた。だが家計の都合で美大進学は断たれ、投稿して担当編集がついたマンガも大成はせず、夢は暗礁に乗り上げてしまう。
悩んだ末に選んだのは自立の道。卒業後、フリーターをして貯めたお金でデザイン専門学校に通い、正社員として就職するまでに3年。しかし仕事が合わずに疲弊していき、一方でマンガ家への道筋は見えないまま。コミティアを知ったのはそんな最中だった。
「出張編集部の存在は知ってたし、編集さんに見つかりたいから勝負してみよう」と決心し、代表作『セックスの誘い方』の一冊目を描き、コミティア121(17年8月)に初参加。「インパクトの強いネタに注目してもらえて嬉しかった。ティアマガにも掲載されて調子に乗り、続きを描こう」と手ごたえを感じた。その後も継続的に同人活動する中で編集者との縁が生まれ、19年後半に会社を辞め商業デビュー。『石見さんのGライフ』の他に『性教育120%』(KADOKAWA)や『セックスの誘い方 社会人編』(forcs)などを発表し、今年4月からは『コミックDAYS』(講談社)での新連載も始まった。
創作のこだわりは「登場する女の子が自分の欲求にまっすぐ自由でいてほしい。キャラを曲げたり生々しい話をウソっぽくしてまでご都合主義なシーンは描きたくない。他人のマンガを読む時も乳袋のブレザーや無防備すぎるパンチラにプリプリしてしまう。女性が楽しむ下ネタにズラして描いてます」と語る。
「最近は世間の風向きが変わって性差別的な下ネタが厳しい目で見られるようになった。間違ったことは絶対に描けないと思い、資料を大量に読んで勉強しています」。表現内容だけでなく技術もMANZEMIやコルクラボの講座に通うなどして磨いてきた。「自分が納得できるマンガを描きたいし、読み返して笑えるものを描けたら最高です」
「『女性像はひとつだけじゃない』ことを資料で読み、前向きな気持ちになれた」のはこれまでの苦労あってこそ。読者から「自由なキャラやバカバカしさに元気が出た、と嬉しい感想を頂けることもある」という。あなたもぜひ、固定観念を吹き飛ばす田滝さんのマンガを読んで笑ってほしい。

TEXT / TAKASHI MENJO ティアズマガジン148に収録