COMITIA152 ごあいさつ

あふれた想いに応えるために

今回のコミティア152へのサークル申込数は募集枠4500に対し6270。この想定を大きく上回る数に感謝しつつも驚いています。
できる限り多くのサークルに参加してもらうため、会場のレイアウトを調整し、最終的に5443サークルを受け入れることができましたが、多くの落選を出すことになってしまいました。この規模の落選は過去にも数えるほどしかなく、状況を重く受け止めています。
このような事情のため、会場内では狭さを感じる場面があるかもしれません。ご理解のうえ、譲り合いと思いやりの気持ちでご参加いただければ幸いです。
東8ホールは出張マンガ編集部のみを配置しています。このスタイルは昨年のコミティア148に誕生したもの。その際にはサークルスペースから離れている点について、どう受け止められるか不安でしたが、好意的な反応が圧倒的に多かったことから継続を決めました。空いた場所にはサークルを配置できるため、一石二鳥の方式でもあります。

さて、開催日となる「6月1日」は、史上2回目の6月開催です。初めての6月開催は21年。東京オリンピック開催の都合で『コミックマーケット99』が8月から5月に移動したことを受けてのものでした。
しかし今回は会場側に「5月中旬~6月上旬」を希望した結果の日程となります。その背景には、ゴールデンウィーク期間中の東京における宿泊費の高騰、新幹線の全席指定化など、遠方からの参加者にとっての負担増などの昨今の状況の変化があります。昨年5月下旬に開催した際の評判が良かったことなども踏まえ、今後しばらくはゴールデンウィークの後の日程での調整をしていく見込みです。
さらに、もう一つ見過ごせない要因があります。それは東京ビッグサイトで進行中の大規模改修工事により、希望通りの日程やホールが取りにくくなっていること。次のように、数年間にわたり使用が順次制限される見通しです。
  西展示棟:25年1月~6月末
  東1~3ホール:25年7月~26年3月末
  東4~6ホール:26年4月~12月末
  全館:27年・28年の1月~2月中旬
この工事により、東京ビッグサイトを利用している催事すべてが大きく影響を受けます。コミティアは毎年2月中旬頃に開催してきましたので、中でも27年、28年の1月から2月中旬に全館が使用不可となるのは厳しい話です。例えば日程が3月にずれ込めば、5月に開催するための準備期間の確保が難しく、6月以降で日程を調整せざるを得なくなります。

今回のように申込が増えている中で、会場拡大の見通しが立てづらく、落選も出始めてしまっているという状況には、もどかしさを感じます。落選とは、コミティアで生まれていたかもしれない作品の芽が、機会を失ってしまうことでもあります。物理的なスペースの拡大が難しいのであれば「表現を届けたい気持ちにより応えるためにはどうすれば良いか?」という視点で考えることも重要になっていくでしょう。
こうした中で感じているのは「会場の広さや机の数に限りはあっても、コミティアの参加者は、無限に広がっていくかもしれない」ということです。この数年間はコロナ禍で数が減りましたが、それを除けば、コミティアの参加者数は初回からずっと増加傾向にあります。
コミティアは、描き手にとっては「作品を送り出す場所」であり、読者にとっては「新しい出会いの入り口」です。たった一冊の本が、描く勇気を与え、たった一言の感想が、続きを描く理由になる。誰もが知らぬ間に、誰かの「きっかけ」になる。そんな両者のコミュニケーションがさらに多くの描き手と読者を引き寄せていく――。そんな好循環があるのではないでしょうか。  
創作の本質とは、「それを生み出そうとする情熱」と、「誰かに伝えたいという強い意志」にほかならないと思います。そんな衝動から生まれる多様な表現を静かに受け止める場所としてコミティアがあるのならば、やはり「無限」の可能性を感じざるを得ません。
コミティアの公式サイトなどには参加者について次のように説明しています。

サークル・一般・企業・運営スタッフの参加者がそれぞれの立場で互いに尊重し、理解し、時に協力し合うことでコミティアというイベントは成り立っています。もてなされるだけの「お客」として参加することは出来ません。「みんなで作るコミティア」を合い言葉に、どうぞ積極的な参加と協力をお願いします。

この説明の通り、一人ひとりの参加者が協力しあってきたからこそ、コミティアの今の規模と価値が生まれているのだと思います。
今日この会場に並ぶすべての作品は、あなたの手に届くかもしれない瞬間を、ひっそりと待っています。そしてその出会いが、また未来の誰かの創作へと、そっと繋がっていくことを信じています。

2025年6月1日
コミティア実行委員会代表 吉田雄平