『南1~4と西4』を使わざるを得なかった話
今回のコミティア154は、東京ビッグサイト「南1・2・3・4+西4ホール」での開催です。コミティアとして南ホールを使用するのはこれが初めてであり、現時点ではこの回限りとする予定です。最初で最後になるかもしれないこの会場を、ぜひ「いつもとちょっと違う景色」として楽しんでいただければと思います。
…と、できるだけポジティブに書き出してみましたが、今回は開催準備から本当に大変でした。会場は実質的に三つのエリアに分かれており、複雑な導線になっています。初めてのホール・初めての運用で、正直なところほぼ手探り。当日の苦労もしのばれます。
もともと南ホールは、現在のコミティアの規模に対してやや手狭で、上下階に分かれる構造のため、会場候補としては検討対象外としてきました。キャパシティの問題は特に深刻で、実際に今回は1000サークル以上の落選を出すことになっています。にもかかわらず、南ホールを使用することになったのは、東京ビッグサイトで進行中の大規模改修工事の影響です。
現在は東1・2・3ホールが休館中。会場全体の稼働率が上がっており、希望する日程・ホールを確保することが難しくなっています。コミティアは毎回、第一希望として東ホールを申請していますが、希望通りにならないことは少なくありません。今回は当初「12月中旬・南ホールのみ」という提示で始まりましたが、交渉を重ね、日程とホール構成を現在の形になんとか調整しました。
開催前日、同じ南ホールでは「文学フリマ東京41」が開催されています。主催の文学フリマ東京事務局さんとは、撤収からコミティアの設営開始までの段取りを事前から綿密に調整してきました。宅配業者や机・イスのレンタル業者とも連携を取りながら、スムーズに設営作業を進めるための計画を立てています。関係各所とのこうした連携も、いつもとは違った挑戦でした。
本日はそんな数々の調整を経て、4577サークルが参加しています。前述の通り、今回は申込多数により多くの落選が出てしまいました。募集4000スペースに対して、申込受付は5963サークル。うち、キャンセルの受付期間を延長し、183件が参加キャンセル扱いとなりましたが、それでも結果として過去最多の1203サークルが抽選または不備により落選となっています。毎回10~20スペースほどある予備スペースも削り、子連れスペース内の1つを除き、すべてサークルを配置しました。
コミティアの主役は「サークル参加者」だと考えています。会場配置図を見ると、企業出展や出張マンガ編集部のスペースが大きく見えると思いますが、落選率はサークル以上になっています。企業も対等な参加者と考えていますから、無くすことは考えませんでした。
こうした経緯を知らなければ、今回のコミティアは「ただ不便なだけ」に感じると思います。実際にその通りなのですから、否定はできません。ただ、「ベストを尽くした結果」ということは知っていただけたら嬉しいです。
話は変わりますが、先日10月12日に阿佐ヶ谷ロフトAで開催された『阿佐ヶ谷リアル囲いvol.4』にゲストとして登壇してきました。こちらはティアズマガジンでも出張版の連載が好評なWEBラジオ「じんしこ」こと「人生思考囲い」のリアルイベント。
普段は視聴者からのお便りにパーソナリティの中野でいちさん、あらばきさん、ピエール手塚さんの三人が答える内容ですが、今回のイベントでは事前に募集したコミティアに関する質問に対してコミティア代表の私が答えつつ、もう一人のゲストのニャロメロンさんも交えて五人でトークする形式でした。
集まった質問は「コミティアの会場のBGMが洋楽中心なのはなぜ?」「ジャンル配置はどうやって決めている?」「自分の地元でコミティアを開催することはできる?」「もしも世界的な有名人がサークル参加してきたら、どう対応する?」などなど。いつも質問されることは「知らないと困る」ようなことがほとんどで、こうした「知らなくても困らない」質問をされる機会は少ないです。新鮮な気持ちで楽しくお話ししました。
その中で気がついたのは、自分が長く中にいるせいで「参加者がコミティアの何に興味を持っていて、何が分からないのか」なかなか思い当たらなくなっていることです。今後どういう情報を発信していくべきか、たいへん参考になりました。実はこの「ごあいさつ」の前半も、『リアル囲い』の経験を経て、丁寧に状況を説明した方が良いのかも知れないと考え、踏み込んだ内情をご説明した次第です。
雄弁に言葉を重ねるだけでは、コミティアは成り立ちません。それでも言葉や表現が、誰かの行動に繋がっていくことも知っています。伝えることを諦めない、サボらない大事さは忘れないようにしたいです。
ということで今日は、少し「不便なコミティア」だと思います。それも込みで楽しんで参加してくれる貴方に、心から感謝します。
2025年11月24日
コミティア実行委員会代表 吉田雄平