COMITIA155 ごあいさつ

創作のラストワンマイル問題

26年、最初のコミティアです。
本日は4828サークルが参加しています。今回は5600を超える申込があり、800サークルほどの落選を出すことになってしまいました。ご参加が叶わなかったサークルの方々、申し訳ありません。2月の申込最多記録は昨年の4433サークルでしたが、今年はそこから1200サークル近く増えたことになります。2年前の2月は3626サークルでした。
サークル数はそう簡単に増えるものではない、という感覚を持っていただけに、この状況には正直、戸惑いがあります。実務的な対応が追いついていない部分もあり、いまコミティアが置かれている状況について、こちらの認識も更新しなければいけないように感じています。

1月7日、東京工芸大学マンガ学科の講義にゲスト講師として呼ばれ、コミティアについて話す機会がありました。これまで中村会長が呼ばれていた講義でしたが、会長が病気療養中であるため代打を務めました。コミティアの歴史や仕組みなどについての資料を作るところから準備して臨み、私にとって良い経験にもなりました。
強く印象に残ったのは、冒頭で学生の皆さんに聞いてみたところ、9割以上がコミティアの名前自体は知っているものの、参加経験がなかったことです。これまでの授業の中で「コミティア」の名前を教わっていたそうですが、そこから「実際に参加してみようかどうか」検討するまでには至っていないようでした。詳しい理由を確かめる時間はありませんでしたが、「知っている」と「参加する」のあいだに距離があることだけは、はっきりと感じました。
大学でマンガを学び、プロを目指す方には同人活動というもの自体、馴染みがない場合も多いのでしょう。コミティアはプロを志向する人だけのための場所ではありませんから、そこは自然なことと受け止めています。
講義では、コミティアの特徴を「描き手と読み手が作品を通じて交流する場」という軸で説明しました。ティアズマガジンで作品レビューを載せたり、作家のインタビュー記事を掲載したりすることもそうですし、見本誌コーナーや見本誌読書会も、多くの「読み手」に作品を受け止めてもらうための仕掛けです。コミティアはそれを大事にしてきました。そして、最近のサークル参加者の急増とも無関係ではないと思います。
その前提を踏まえると、マンガ学科の学生の大半がコミティアに来ていないという事実も、別の見え方となります。周囲の友人や先生といった、真剣に自分の作品に反応を返し、相談にも乗ってくれる「読み手」が近くにいる。そうした環境があるうちは、外に求める必要性を感じにくい──ということです。もちろん、ここは推測の域を出ません。

マンガに限らず、自分の創作物を簡単に見てもらう手段として、WEB上で発表する方法があります。うまく注目を集められれば、仕事に繋げていくことも夢ではありません。実際にSNSを経由したヒット作品は多く、過去には「インターネットがあれば同人誌即売会は不要」といった説もありました。
しかし近年の状況を見ていると、WEB上では膨大な作品が、さまざまなサービスに日々投稿され続けています。そこから「見つけてもらう」「好きなものを探す」ことは、昔より格段に難しくなりました。誰かが素晴らしい作品を公開したとしても、思うような反応を得られるかどうかはまた別の問題です。これには作品の良し悪しに加え、「拡散のされやすさ」のような、WEB独自の価値観も影響しているはずです。
WEBで創作する人が増えれば増えるほど、作品の多様性が広がれば広がるほど、見つけてもらえない可能性も高くなる。これは構造的に避けにくい話だと思います。
出張マンガ編集部が盛況な理由の一つには「編集者に作品を読んでもらいたい」という描き手の切実な欲求があります。コミティアを含めたリアルな発表の場は、現実の手応えを生で受け取れる場所として価値が増している。私はそんな仮説を立てています。

「ラストワンマイル」という言葉があります。物流業界では「物資を特定の個人に配送するための最後の区間」という意味合いの用語で、解決しなければいけない課題が多いことでも知られています。創作が無数に溢れる中で、作品を読者に届ける「最後の区間」、創作のラストワンマイルにも、課題が生まれている状況なのではないか。今回の経験から、そう感じました。
コミティアは「描き手」と「読み手」をどう繋げるか、長年にわたって取り組み続けてきたイベントでもあります。それがこの時代に何を意味するのか、改めて考えてみる時期が来た、ということなのでしょう。
ということで、本年は「届き方」を意識しながら、より良い場所を目指す手がかりを探ってゆきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

2026年2月22日
コミティア実行委員会代表 吉田雄平