代表交代・会長就任のお知らせ
2022年11月12日
2022年11月27日開催の「COMITIA142」をもちまして、現代表・中村公彦がコミティア実行委員会・代表を退任し、副代表・吉田雄平が代表に就任することになりました。
中村公彦はコミティア実行委員会・会長に就任し、今後は新しい立場でコミティアに関わってまいります。
皆さまにはこれからもコミティアへ変わらぬご支援、ご参加をいただければ幸いです。
中村公彦より代表退任・会長就任のごあいさつ
世の中でけしてお金で買えない物の一つに「時間」があります。
1984年11月に直接参加55サークル/委託参加46サークルでスタートしたこのコミティアは今年で38年。現在この『ティアズマガジン』で好評連載中の「コミティア魂」(著者・ばるぼらさん)を読むとその歴史を辿ることができますが、発足当初はある意味で無謀な若者たちが止むにやまれない思いで立ち上げたのをしみじみと思い出します。
よちよち歩きであちこちにぶつかったりつまづいたりしながら眠れぬ夜を過ごし、トライ&エラーを繰り返して少しづつ成長し、それに付き合ってくれるたくさんの参加者がいて、やっと現在のコミティアができあがりました。
最初から今の形を想定して始めた訳ではないけれど、かといって何らかの新しい創作マンガの流通システムを生み出し、定着させなければ意味がないとも考えていました。このようにアマチュア作家主体でボランティア運営の催しが、小規模な趣味の活動の範疇ではなく、数千のサークルと数万の参加者が集まる大きなイベントになるとは誰が予想しえたでしょうか。
けれどそれが形になるには30余年の「時間」をかけた試行錯誤の積み重ねが必要でした。どれほど経費をかけたとしても、今のコミティアをある日いきなり成立させることはできません。「時間=歴史」はけしてお金では買えないのです。
コミティアのもう一つのテーマは「続けなければならない」ということです 。
同人誌即売会という一日限り一期一会の開催スタイルだからこそ、定期的な開催によって創作の場を維持し、作り手が安心して創作活動に集中できる拠点となることを目標としてきました。またこの『ティアズマガジン』のPush&Reviewのコーナーに代表されるように、発表した作品のフィードバックが届き、次の作品作りに生かせるサイクルも重要です。「読み継ぎ、語り継ぐこと」こそが、コミティアのもっとも大切にしてきた営みなのです。
2014年にコミティアが30周年を迎えた時に、ある先達に「30年は通過点。50年、100年を目指せ」と有難い言葉をいただきました。「コミティアはいつも此処にいます」と言い続けて来たけれど、それはつまり現在の代表である私自身がいなくなった後もコミティアは続かなければならないということです。それから私にとって「次の時代」がテーマとなりました。
コミティアはこれからも創作マンガ同人誌即売会というフォーマットを保ちつつ、環境の変化やテクノロジーの進化に対応し、時代や周囲の状況に合わせてその運営や方法論をアップデートしてゆかねばなりません。思えばこれまでの38年間も会場問題も含めその歴史のくり返しでありました。
その過程で学んだのは、継続のためには変化を怖れてはいけないということです。そこで私も自らの役割を次の人間にバトンタッチすることにしました。このコミティア142をもって私・中村公彦はコミティア実行委員会の代表を退任し、次回143から新代表の吉田雄平に交代します。
私自身の年齢(61歳)の問題もありますが、ここ3年間で大きな影響を受けたコロナ禍を乗り越えウィズコロナ・アフターコロナの時代に対応するには、新しい感覚とノウハウが求められており、ここが良いタイミングだと判断しました。
そして次回143より私は「コミティア実行委員会・会長」という肩書にあらため、運営実務から離れて、対外的な折衝・発信や地方コミティアとの連携担当がメインとなります。とは言え、コミティア会場では今後も一スタッフとして参加していますので、見かけたら声をかけてもらえると嬉しいです。気持ちは「生涯現役」のつもりなので、どうぞよろしくお願いします。
最後になりましたが今回のコミティア142には3325のサークル・個人の方が参加しています。今日という日に、たくさんの描き手と出会い、たくさんの作品が読めることが私は嬉しくてなりません。そんな一人の読者としての初期衝動を原動力にコミティアをずっと開催してきました。長いお付き合いを本当にありがとうございました。そして次の世代にバトンタッチされるコミティアにも変わらぬご愛顧をお願いします。
ショウ・マスト・ゴー・オン! この素晴らしい舞台がいつまでも続きますように。
吉田雄平より代表就任のごあいさつ
はじめまして。吉田雄平と申します。次回より代表を務めることになりました。今後、私の名前でコミティアの情報を発信する機会が増えるかと思いますので、お見知りおきいただければ幸いです。
今回の「代表交代」が特殊な点は、中村代表が「会長」というこれまでコミティアに無かった新しい役割に就くことでしょう。共同代表制にする案も検討したのですが、役割をより明確にする形になりました。今の時代の変化に対応する「攻め」を重視したことが理由の一つです。感染症対策に伴う各種ガイドラインの理解と参加ルールへの反映、スタッフ作業の増加による人手不足の対応と募集強化、新しい参加者を増やすための広報活動などなど、近年生まれたコミティアの課題は山積みです。
中村代表は1961年生まれ、私は1980年生まれ。コミティアが始まったのは私が4才の頃ですから、初期のことは伝え聞くのみです。担当編集として関わっている、ばるぼらさんの連載記事「コミティア魂」ではコミティアの歴史を改めて学んでいるところです。私がコミティアに初めて参加したのは1998年。好きな作家の作品を求め、よくわからないまま会場に足を運びました。スタッフとして関わるようになったのは2007年。見本誌がたくさん読めると聞いて何も考えずに入りました。そこから遠いところまで来てしまったような気がします。
コミティアのスタッフポリシーとして「出来る人が出来ることをやる」というものがあります。私はスタッフ同士が対等な空気を生み出している一因になっている、このポリシーが好きです。代表を特段やりたいという気持ちは無かったのですが「出来る人がやらないとな…」と受け止めることにしました。重い立場であることを理解しつつも、今のコミティアにはしっかりとした骨組みがあり、「代表」とはコミティアを構成する一つのピースに過ぎません。「この先もずっと続くように運営する」という明確な目標の元で、各作業には多くの頼もしいスタッフがリーダーシップを取っています。代表が全てに関わっている訳ではありません。何よりコミティアの主役は描き手であるサークル参加者であり、その受け取り手である一般参加者です。重要なのはコミティアの代表が誰かではなく、今日のコミティアが「楽しかった!」とより多くの方に感じてもらうことだと思うのです。私が無邪気にコミティアに一般参加していた頃、代表の名前を意識することはありませんでしたし、それで十分に魅力的な場所でした。
私がスタッフとして関わってきた中でも東日本大震災やコロナ禍など開催危機が少なからずありました。作業が終わらず事務所に泊まり込んだり、理不尽としか言いようのないトラブルが起きたりしたことも多々あります。それでもやってこれたのは「スタッフをしていて良かった!」と感じるような作品や人との出会いがあったからです。そんな魂と魂が握手するような作品が生まれる素敵な場所が、これからも永遠に続くように支え、繋げてゆきたいと思います。中村代表、ひとまずお疲れさまでした!
※両名の「ごあいさつ」は『ティアズマガジンVol.142』に収録した原稿を編集したものです。